ソフトウェアからハードウェアへ IT技術25年周期説で占う未来
第3回 「計算」「記憶」「検索」から「生成」へ
この先の25年を「生成AI時代」と想定してありうるデバイスを考察してみる。同時に25年周期が示す経済の循環がどのようなものか見ておきたい。この経済の動向と同機するからこそ、新しいデバイスをもって生成AIはますます民主化されていくだろう。
目次
新しいデバイスは指示・依頼の窓口さえあればいい
次の25年に出てくるデバイスが提供する機能は「生成」だ。
生成AIはプログラムを生成する。プログラムとは計算のことと言っていい。生成AIは記憶を生成する。ありもしない事実さえつくりだしてしまう。生成AIは検索の対象となる情報さえも生成する。
そこまで考えると、生成の機能を果たすデバイスはスマートフォンのようなものではないのかもしれない。指示・依頼の窓口(UI)さえあれば、それ以前の機能を果たせるだろう。新しい機能は過去のデバイスがもっていた機能に追加されていく。
新しいデバイスのUIを通じて「計算」「記憶」「検索」の機能を提供させるだけでいい。そのうえで「生成」の機能を充実させていけばいいのだ。
それは小型デバイスでよいだろう。言語であれ、イメージであれ、音声であれ、入力できて指示ができ出力用のディスプレイがある。画面上にアプリが並ぶというようなUIは不要だ。
あとはたとえば計算なら、計算機アプリを立ち上げたりせず(そもそもアプリがない)マイクに向かって「3980円の3割引っていくら?」とか、「直径2.5センチの球の容積は?」と尋ねるだけだ。
たとえば記憶や検索なら、ブラウザアプリなどそもそもないのだから、マイクに向かって「2回前にディズニーランド行ったときの今日の写真をみせて」とか、「お腹すいたけど、このへんで美味しいお店を3つピックアップして」と言えばいいだけだ。記憶の計算であれば、「先週の移動距離の総計は?」とか。
現在すでに「rabbit r1」というようなデバイスが登場している。スマートホンの半分ほどのサイズで、ディスプレイとジョグダイヤルとマイクを装備している。ネットの紹介記事(ZDNET「AIガジェット「rabbit r1」を使ってみた─よかった点と残念だった点」)にはカメラでラーメンを撮影して「カロリーを計算して」といった指示をしている。それに対し、rabbit r1は概算で回答する。ただし、現状ではまだ音声アシスタントの携帯版に近いレベルにしかないようではある。実際に開発するRabbit社のCEO、ジェシー・リューは現時点ではまだスマートフォンのタップ数を減らすことで時間を節約する程度のベネフィットしか明言していない。
気になるのは、ジョブスが得意とした「コンピューテーショナルデザイン」の思想でiPhone、そしてSiriが設計されている可能性だ。コンピューテーショナルデザインとはテクノロジーの未来的な進化を織り込んだ製品・サービスの設計のことだ。
iPhoneとSiriの組み合わせは、すでに生成AI時代のデバイスを想定されているかもしれない。iPhoneが進化したかたちで全く新しいデバイスの登場があっても不思議ではないだろう。