ソフトウェアからハードウェアへ IT技術25年周期説で占う未来
第2回 スマートフォンに代わるデバイスの登場
時代を画するテクノロジーの登場は、それに見合うマシン、デバイスの登場を促す。生成AIの民主化をこれまでの歴史に倣って考えていくと、スマートフォンに代わるデバイスが必ずその後押しをするはずだ。では、スマートフォンに代わるデバイスとはどんなものか?
目次
ソフトウェアの時代に負けた日本
1995年以降のインターネットの時代が求めたのは情報端末の小型化だ。なぜならネットワークに接続さえできれば、どんな情報も持ち歩く必要がなくなるからだ。インターネットの時代はまたスマーフォンの時代でもある。
よく言われているように、iPhoneにはソニーのWALKMANの着想があり、docomoのi-modeの発想がヒントになっている。しかし、それをものにしたのはAppleであり、スティーブ・ジョブスだった。
i-mode誕生の裏側を語った名著に開発者の1人であった松永真理が書いた『iモード事件』(角川文庫)という本があった。著者は往時、寵児としてメディアにもよく登場していた。これだけの推進力をもって誕生したi-modeというサービスの凄さを思うだけでなく、テクノロジーを応用しサービス化する発想こそ時代をつくるのだと思わずにいられなくなる。それはジョブスとて同じことで、今の日本に欠けているのはこういう推進力のあるビジネスパーソンなのだとつくづく思わされる。エンジニアの技術力は今でも決して諸外国にひけをとるものではないのだから。
i-modeの大ヒットは日本のIT産業の徒花となった。というのも、2000年代中盤にさしかかって、i-modeの牙城はもろくもiPhoneに崩されてしまったからだ。どうして、i-modeを生んだ日本からスマートフォンが生まれなかったのか。それは推進力のあるビジネスパーソンが現れなかったこと、あるいは現れても排除されたことが遠因だった。Winnyの金子勇氏のことをなぜか思い浮かべたりもする。
この時代、ついに国内のIT産業は衰退の道を歩みはじめる。電子立国の核心だった半導体製造のシェアは韓国、台湾に奪われ、あれだけ百花繚乱だった携帯電話のメーカーも、スマートフォンのビジネスで後方に追いやられる。世界市場でのシェアなど望むべくもない状況になってしまった。
そして、次の嵐は突然きた。
2022年暮れ、OpenAIがGPT-3.5を一般公開する。
今では、これがひとつ時代の変わり目(メルクマール)になると考える人は少なくない。メルクマールごとの周期にその時代に見合うマシン、デバイスが登場し、それをもって人々にテクノロジーは真に浸透してきた。過去の75年の成り行きを参照すれば、そこに疑いの余地はない。
次の25〜30年のなかで進む生成AIの一般化、常識化、日常化を考えていくと、スマートフォンに代わるデバイスが必ず登場すると予測できる。