〈生成AI時代〉人とAIが共創する新しい働き方
IT批評主催オンラインセミナー ディスカッションレポート(1)
本セミナーは、「IT批評」主催、生成AIの社会実装および産業の再構築を目指す一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)の後援でオンラインにて開催された。当日行われたパネルディスカッション「生成AI時代における課題と展望」の模様をお伝えする。生成AIが実現する未来のビジネス環境を探るとともに、組織と働く個人がどのように生成AIを活用し、働く喜びをいかに高めていくかについて活発な議論がかわされた。
2024年12月4日 トリプルアイズ本社にて
*当日のセミナー全体の模様は後日、動画として配信いたします。
パネルディスカッション登壇者プロフィール
馬場雪乃氏(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻准教授) 人工知能、人とAIの協働、集合知、クラウドソーシングの研究に従事。人間の正確な判断をAIに取り入れる機械学習技術を多数開発。JSTムーンショット型研究開発プロジェクトにおいて、人間と協働して研究を行うパートナーAIの開発を推進する。共著書に『データサイエンティスト養成読本 機械学習入門編』(技術評論社)『ヒューマンコンピュテーションとクラウドソーシング』(講談社)がある。 |
田村憲孝氏(株式会社ウェブタイガー 代表取締役) ソーシャルメディア・IT全般にわたるコンサルティングや各種WEB広告運用代行サービス、ChatGPTをはじめとした生成AI活用サポートサービスを提供。大手企業や地方公共団体へのコンサルティング実績多数。著書に、『世界一わかりやすいChatGPTマスター養成講座』(つた書房)など多数。 |
片渕博哉氏(株式会社トリプルアイズ 執行役員) 画像認識プラットフォーム・AIZEのメインエンジニア。AIの研究開発から学習アーキテクトの構築をメインに、多種多様の企業案件やAIを使用したサービスの開発を担当する傍ら、AI技術者教育サービス「AT20」のリーダーとして、カリキュラムや教材の作成に従事する。 |
小村亮氏(一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA) 事務局次長) 株式会社オプトにて、PRを主軸に、コミュニケーションデザインやブランドクリエイティブなどブランディング領域のプランナーとして従事。その後、2021年に株式会社デジタルホールディングスへの出向を経て、フリーランスとして独立し、複数社の経営に携わる。生成AI活用普及協会の立ち上げに参画。広報責任者を経て現職。 |
桐原永叔(「IT批評」編集長 モデレーター) 株式会社トリプルアイズ取締役として、事業企画・推進を行う傍ら、「Web IT批評」を運営している。また、企業へのコンサルティングや講演活動も多数の実績がある。「Web IT批評」では、毎月レビュー記事を執筆・配信。編著書に『生成AI時代の教養』(風濤社)、著書に『ももクロ論 水着と棘のコントラディクション』(共著/実業之日本社)がある。 |
目次
ChatGPT-3.5は何を変えたのか
桐原 はじめに、ChatGPT-3.5が出てきた意味についてみなさんにお聞きしたいと思います。ChatGPT-3.5の出現によって生成AI時代はスタートを切ったと思っているのですが、みなさんの携わられている分野で起きている変化やインパクトについて話をお伺いできればと思います。
田村 インパクトという点では、ソーシャルメディアが出てきた時に似ているという印象があります。どこが似ているのかというと、世間の捉え方ですね。お客さんと接していると、期待が先行していて、「そこまで期待したらダメだろう」みたいなところまで期待したがために失望感を味わっている人も多い、というところが似ているなと感じています。
小村 クルマの普及を喩えとしてよく使うのですが、今でもクルマの事故のリスクはゼロになっていませんよね。だからと言ってクルマを使うのをやめましょうとはならない。利便性が高いので、これとどううまく付き合っていくか、事故を少なくするにはどうしたらいいのかということでいろんなルールが定められてきました。AIもクルマと同様に利便性や可能性を秘めており、おそらくインパクトという点ではわれわれが計り知れないレベルなんだと思います。ですので、そのリスクとの付き合い方について、真剣に考えていかなきゃいけない時期に来ていると思います。
馬場 わたしは15年ぐらいAIの研究をしてきているわけなんですけれども、生成AI、特にChatGPTの登場によって、AIの存在が瞬く間に一般の人に浸透した感があります。カフェにいて、両サイドにいる人がAIの話をしているということが普通にあるわけです。それはこれまでには考えられなかったことです。それ以前には、AIは形が見えないものだったのが、ChatGPTによって、ある種のエージェントというか秘書のような形で具体化されたところが、人々にAIを浸透させるのに効果があったんだなと思います。AIという概念を伝えるという意味で、すごく機能していると感じています。
桐原 たしかに、テレビやSNSで普通にAIが話題に出てくるようになりましたね。片渕さんはいかがですか? 片渕さんは画像認識の研究をこれまでずっとやってきたわけですよね。AIベンチャーの界隈だと、ディープラーニングが出てきたときに、第3次AIブームが来たと言って盛り上がっていましたけど、今考えると、あれはブームと呼べるものだったんだろうか、今やっと本当のブームが来ていると感じるのですが。
片渕 そうですね。将棋の電王戦でAIのプログラムがプロ棋士に勝ったというときには、プロモーション効果も含めて一定以上のインパクトがあったかなと思うんですけども、それと比較しても、凌駕するぐらいのブームが来ているというのは感じます。
田村 AIを直接一般の人が触っているという感覚がこれまではなかったですよね。ソーシャルメディアで言うと、広告のアルゴリズムにはAIが入っていることは知っていましたけど、自分で動かしている感じがまったくなかったじゃないですか。生成AIが出てきて自分の手元で使えるようになったのは相当大きいことだと思います。
桐原 使えるAIが出てきたことで、自分の仕事とAIの関係について考えざるを得なくなっていますよね。ひところ言われたAI脅威論でもユートピア論でもなく、現実的にAIとの協働を考える時期に来ているのかなと思っています。