+メッセージの可能性とコミュニケーションツールのあるべき姿
――SMS配信事業のパイオニア「アクリート」代表・田中優成氏に聞く(2)

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取材・構成  土田 修
IT批評編集部

 

 

2018年に携帯3大キャリアが提供を開始した「+メッセージ」は、より高い信頼性を確保しつつリッチコンテンツが配信できる次世代型SMSである。アクリートは+メッセージを企業や自治体がワンストップで利用できる「アクリートポータル」を運営している。田中代表は+メッセージにどんな役割を期待しているのか。さらにコミュニケーションツールのあるべき姿や携帯電話番号が持つデジタルID としての可能性について訊いた。

 

 

株式会社アクリート代表取締役社長

田中 優成 (たなか ゆうせい)

1993年立命館大学国際関係学部卒業後、総合商社トーメン(現 豊田通商)入社。欧州や東南アジア、中東にて電子機器の輸出入・IT系の新規事業企画やベンチャー投資プロジェクトに携わる。2003年3月に、個人利用の目的で日本の携帯電話と海外のGSM端末でSMS(ショートメッセージサービス)の送受信が可能になるSMS配信事業をスタート。2006年6月、ITベンチャー企業であるインディゴへの事業譲渡をきっかけに、2007年に同社へ転籍、サービス&ソリューション事業部GMとして、個人向けSMS関連事業の運営やマイクロソフト社のパートナー認定された自社開発サーバソリューション製品の企画販売、RPA関連事業に従事。SMS関連事業では、2010年11月に法人向けSMS 配信サービス事業を立ち上げ、事業運営を担当。2014年5月にはSMS配信サービス事業を会社分割(新設分割)し、株式会社アクリート設立に参画すると共に非常勤取締役に就任。その後、2017年8月にインディゴよりアクリートに転籍、セールス&マーケティング部門ゼネラルマネージャー、専務取締役を経て、2019年1月に代表取締役社長に就任。迷惑メール対策推進協議会(総務省)やフィッシング対策協議会(経済産業省)の技術ワーキンググループのメンバーとして「迷惑メール白書」と「フィッシング白書」の執筆も行う。

https://www.accrete-inc.com/

 

 

 

 

目次

携帯電話番号をコミュニケーションの目線でリッチ化したサービス「+メッセージ」

携帯電話番号はデジタル・アイデンティティーになりうる

コミュニケーションツールこそシンプルであるべき

+メッセージをワンストップで活用できる「アクリートポータル」

SMS事業は社会性の高い通信インフラ

東南アジア進出を視野にリアルとデジタルのギャップをDXで補う

コミュニケーション・スタイルの変化とハイ/ローコンテクスト文化のなかでのメッセージング

情報の送信者と受信者の間の信頼性をデジタル技術で担保し、受け手ファーストで、シンプルで使いやすいサービスを提供していくことが使命

日本を飛び出し、「アジアのアクリート」として、デジタルとリアルの間(あいだ)に寄り添い「セキュリティ」と「コミュニケーション」を提供しつづける100年企業を目指す

 

 

 

 

 

携帯電話番号をコミュニケーションの目線でリッチ化したサービス「+メッセージ」

 

アクリートは、新たな情報のプラットフォームになりうるものとして、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が提供する「+(プラス)メッセージ」の普及に努めています。+メッセージとは、移動体通信事業者や関連企業からなる業界団体であるGSMA(Global System for Mobile Communications Association)が開発したSMSの後継となる世界標準規格(RCS*)に準拠した次世代SMSです。SMSで実現できなかった開封確認が取れる形で、画像・動画といったリッチコンテンツを送受信する機能を持ちます。高速・大容量である5Gネットワークに対応した、リッチなSMSと言えば想像がつくでしょうか。

+メッセージは、画像や動画に加えて、ファイルも送信でき、位置情報の送受信も容易でわかりやすく表示されます。また、選択式の質問などもカルーセルを用いて送信可能です。

公式アカウント機能も+メッセージの大きな特徴です。+メッセージでは、信頼のおける事業者からのメッセージであれば、公式マークが表示されるので、なりすましによるフィッシングメッセージと受信したユーザー側で簡単に区別することができます。+メッセージを携帯電話会社が普及させようという大きな理由もそこにあります。

 

 

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2001年に携帯電話に対する迷惑メールが社会問題化しました。2002年施行の特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(「特電法」と略されます)や特商法には迷惑メールを規制する項目が追加され(2つ合わせて迷惑メール防止二法と称されることもあります)、受信者のオプトイン(*2)が取得できていないプロモーションや広告にはSMSや+メッセージを使わない・使わせないということになっています。

どちらかというと、緊急性の高い情報、重要度の高い情報、たとえば銀行だとか保険会社だとか自治体だとかそういったところに使って欲しいというふうにキャリアは考えているようです。さらに受信したユーザーが開封したかどうかが企業側で把握可能なことも便利な点です。

+メッセージとは、携帯電話番号をよりコミュニケーションの目線でリッチ化したものと考えていいでしょう。

2018年5月個人間コミュニケーション手段として開始した+メッセージは、2019年12月に法人向けにも利用を開放しました。

+メッセージの普及についてですが、ドコモ・KDDI・ソフトバンクの3社およびMVNO各社は、2022年3月にはアンドロイド端末を中心に、4000万人ユーザー到達を一つの目標に設定しています。今後の普及の加速は、3000万台以上存在するガラケー(フィーチャーフォン)のスマホへの切り替えや+メッセージアプリがプリインストールされていないiPhoneへのインストール(App Storeからのダウンロード必要)がどこまで進むかが影響すると思っています。

*1 RCS規格=リッチ・コミュニケーションサービス規格

*2 オプトイン=ユーザーに宣伝広告を配信する際、事前に許可を求めたり、宣伝広告の受け取りを、ユーザーが許可する意思を示すこと

 

 

携帯電話番号はデジタル・アイデンティティーになりうる

 

最近の、携帯電話番号同士での、SMSによるテキスト・メッセージングや、+メッセージによるリッチ・メッセージングのコミュニケ-ションの普及(の取り組み)によって、自然と、SMSや+メッセージの背後に存在する、「携帯電話番号」そのものが持つ価値にも注目が集まり始めている、と感じております。

「携帯電話番号そのものが持つ価値」とは、「携帯電話番号を、簡易なデジタル・アイデンティティー」として位置付けできるのではないか、という視点です。

さらには、携帯電話番号をデジタル・アイデンティティーとしてどこまで活用していけるのか、にもつながります。

携帯電話番号は、携帯電話の犯罪利用の防止という観点から、法律(電気通信事業法や携帯電話不正利用防止法)でその契約者の本人確認が義務付けられている(免許証・パスポート・住民票など本人確認できる書類で)わけですから、携帯電話番号には一定の信用という価値があります。

2021年9月10日、総務省がソフトバンクに対して、「契約者の本人確認をせず携帯音声通信役務での回線契約の締結をした」として、携帯電話不正利用防止法違反で是正命令をしたことがありました。携帯電話不正利用防止法は、携帯電話の新規契約等の際に、契約者等の本人確認を行うことを義務付けています。

総務省は、携帯電話が振り込め詐欺などの犯罪に不正に利用されないよう、これまで通り法の厳正な執行に務めていく方針ですから、携帯電話番号の契約者である本人確認も、厳格運用が求められていくことになります。

ただし音声通話機能としての携帯電話番号の利用だけでは、携帯電話番号がデジタル・アイデンティティーとしての活用の可能性が認識されているわけではないと思います。

デジタル・アイデンティティーとして認識・普及していくには、SMSや+メッセージなどで広く利用されることが必要であると考えます。

その視点では、前述の通り、+メッセージの普及の課題もあって、多くのAndroid端末には標準装備されていますが、iPhoneにはプリインストールされていません。アプリのプリインストールは、端末メーカーの方針をベースに携帯キャリアとの協議で決まる仕組みですので、Appleは過去から自社以外のアプリのプリインストールを一切実施しないという方針ですし、Android端末の中でもGoogleはPixelには自社アプリ以外はプリインストールしていませんので、+メッセージを提供する携帯キャリアが販売する場合でも、それらの端末のユーザーは自身でアプリをダウンロードするようになっています。

携帯電話番号は必ず存在するものですから、この番号をデジタル・アイデンティティーとしてインターネットサービスで活用していけばいいと思うのですが、そこまで行っていません。

今は携帯電話会社がどうやって+メッセージを普及させていこうかという段階ですが、法人利用のSMSだって10年かかっています。2010年には影も形もなかったわけですから。「SNS」の誤植でしょうって散々言われました(笑)。「ソーシャルネットワークサービスは聞いたことがあるけど、ショートメッセージサービスは聞いたことがないと」と今でもたまに言われます。

法人利用のSMSは現在、年間10億通単位で利用されていますが、+メッセージも普及するまでに時間がかかると覚悟しています。ガラケーが3000万台ぐらい残っていますから、本当に普及するのは2026年以降かもしれません。

 

 

コミュニケーションツールこそシンプルであるべき

 

リッチコンテンツを扱うというのは、情報の伝達の密度を上げることが目的です。たとえば私のアイデアですが、地震などでガス会社がガスの元栓を自動で閉めた場合(閉栓状態)に、利用者が個々でガス栓をどのように開けるのかを伝えるのは動画が最適です。地震により閉栓したエリア全域に、職員を派遣するとなると大変なことですが、ガス会社より対象となっているエリアの住民の携帯電話番号に+メッセージで動画付きユーザーマニュアルを送って、ご自分で開栓してくださいとなれば利便性が高まります。

また先日、地震で家の鏡が落ちて割れたのですが、保険会社やマンション管理会社とのやりとりもいちいち携帯電話の音声通話で行いました。そのなかで修理会社の担当者に、+メッセージを使ってもらい被害状況の動画や写真を携帯電話番号同士で送ることができてスムーズに話が進みました。

学生さんを中心にEメールを使わない方も増えています。Eメールも登場して25年ぐらいになりますが、もしかしたら代替期に来ているのかもしれません。そこら辺にうまく次のコミュニケーション手段として+メッセージをはめられたらいいなと思っています。

2021年9月に発足したデジタル庁が、ミッションとして「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を。」とメッセージを出しましたが、私も同感です。ITリテラシーは人によって著しく違うので、ITリテラシーに合わせたいろんなコミュニケーション手段が用意されているべきだと思います。何か特定の情報手段が他の手段を駆逐してドミネイト(占有)するのではなく、情報の受け手(利用者)ファーストでリテラシーや目的・嗜好に合わせた懐の深いコミュニケーションの多様性を実現する社会になればよいなと思います。ですから、多様性のあるコミュニケーション環境は、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を。」のためにも必要なのだと考えています。

電気が通じなくなると、テレビや家庭のインターネット環境など情報手段が携帯電話以外は全部閉じてしまいます。そういう意味では携帯電話やスマートフォンにはライフライン的な側面があります。

とかく最新のアプリやテクノロジーに興味が行きがちですが、コミュニケーション手段も一見ローテクに見えるものも必要で、全部が全部ハイテク化する必要はないのです。商社時代、北欧の人に「日本の製品ってボタンが多すぎる」とよく言われました。8割ぐらいのボタンは一回も使ったことがないと。今、シンプル家電が流行っていますが、コミュニケーションツールこそシンプルであるべきだと思います。どんなコミュニケーションツールを使うのかはユーザーが決めるべきで、その選択肢に+メッセージが入っていればいいなと考えています。

 

 

+メッセージをワンストップで活用できる「アクリートポータル」

 

アクリートでは、企業が+メッセージを一元的に利用するために「アクリートポータル」というサービスを始めました。企業は携帯電話会社それぞれと契約すれば+メッセージを使うことはできますが、仕様が微妙に違うため、ユーザーの携帯電話番号に情報を送りたいと思った場合、それぞれの携帯電話会社用につくりかえる必要があります。相手の携帯電話番号だけを見ても、ガラケーユーザーなのか、スマホユーザーで+メッセージアプリを使っているユーザーなのか、使っていないユーザーなのかがわかりません。そこはアクリートにワンストップで情報配信リクエストをAPIで送っていただけると、ガラケーユーザーにはSMSとしてテキストを送りますし、スマホユーザーで+メッセージに入っている方には+メッセージ用のリッチコンテンツを送ることができます。そこをワンストップで私たちが全部自動的に処理します。携帯電話会社の差分も吸収するので企業は悩まなくていいというサービスです。

私たちはSMSのパイオニアとしてやってきましたが、今のうちから+メッセージのパイオニアとしてもそうしたサービスを用意しておこうという目論見です。戦略的に+メッセージの普及と寄り添いながらやっていくことが大事だと考えています。

 

 

 

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SMS事業は社会性の高い通信インフラ

 

SMS事業の参入障壁は、高くはないけれども、かといって低くもありません。どういうことかというと、サービス自体は単純ですが、規模の経済が求められる事業なのでシステム構築に少なくない先行投資が求められます。いろんなお客様からSMSの送信リクエストが来たとき、遅滞なく数秒で処理しなければなりません。万単位のお客様から同時にアクセスが来たときにもどのお客様に対しても同じようにサービス提供しなければなりません。そのためにはそれなりのシステムを用意する必要があるのです。ノウハウも必要ですし、障害対策としての冗長化も必須です。はじめるのは簡単ですが、安定したサービスを継続的に提供するのは簡単ではありません。

 

 

SMS配信ゲートウェイの存在意義

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法人によるSMSの配信量は近年、急激に増加しています。SMSの配信能力は、SMS配信可能数のみならず、SMS配信事業者としての配信基盤の総合力が問われる市場環境となりつつあります。

アクリートは、大量配信に耐えうるシステム基盤を整備するために、単なるシステム上の理論値ではなく、実際に国内最大規模のSMSを取り扱うことによって得られる経験やそれに基づく予測を織り込むことによって、大規模配信プラットフォームを実現しています。

私たちは、SMS事業を社会性の高い通信インフラという側面があるビジネスと捉えています。

上場してみて改めて思うのですが、世の中からの期待の高さをひしひしと感じます。きちんとガバナンスをして、自分を律しながらさまざまなステークホルダーの期待に応えていく重責を感じています。ひとりでできることには限りがあります。2010年に先例がない中で数人が集まって事業をスタートしたわけですが、今や数千万人のお客様と一緒にこのSMS事業をつくっているという感があり、責任と同時に喜びも感じています。

使っていただいて「よかったよ」「助かったよ」というお声をいただくことを目指しています。「お客様ファースト」という言葉がありますが、本当に誠実に対応していくのはなかなか大変なことですが、それが自分たちの存在の証にもなるので、そこは大事にしていきたいと思っています。

 

 

 

 

 

東南アジア進出を視野にリアルとデジタルのギャップをDXで補う

 

私自身は商社から転籍をしたのが40歳で、50歳でアクリートが上場しました。これからの10年は与えられた場で何ができるのかいろいろ試していきたいと思います。

「場」というのは、日本だけではなく全世界を視野に入れています。今回、M&Aで海外の会社を子会社化したというのも、日本で得た経験を東南アジアにおいてセキュリティとコミュニケーションで活かしたい、同じような経済圏を創出したいという思いからです。

商社時代に世界中に日本の製品を売り歩いていたわけですが、一巡してそこに戻ってきたようにも感じます。ソフトウエアについていえば、日本は輸入超過になっていて、世界で勝負しているアプリは少ないのがわかります。あのLINEでさえも特定の国でしかスタンダードになっていないということを考えると、何か限界があるのだろうなと思います。だからこそ、そこにチャレンジしていきたい。少なくとも東南アジアはユーザーの感覚が近しいものがあると考えられますから、セキュリティとコミュニケーションのサービスでお役に立てるものを提供していきたいです。

 

 

アジア市場は日本市場の約100倍

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アジアには、住所はないけれども携帯電話番号はあるという人も多いですからね。ベトナム政府が年率25%でEコマース市場を拡大していくという方針を出しているように、東南アジアもリアルエコノミーからデジタルエコノミーにどんどん移行しているので、リアルとデジタルのトランジションのギャップが生じています。そこをDXで補うというニーズはあると思っていますし、私たちがチャレンジしていくゾーンだと期待しています。

 

 

コミュニケーション・スタイルの変化とハイ/ローコンテクスト文化のなかでのメッセージング

 

よく、日本人や日本語は行間を読むハイコンテクストの文化で欧米の人はローコンテクスト文化だ、と語られることがあります。ハイコンテクストは言語以外の情報の重視度が高く(ハイ)、ローコンテクストとは、言語以外の情報の重視度が低い(ロー)、言い換えれば語られたことそのものの重視度が高いコミュニケ-ションを指します。

両者は、コミュニケーションスタイルの違いです。デジタル・コミュニケーションの浸透に伴い、日本人のコミュニケ-ション・スタイルも、LINEやTwitterのように表示されている文字やスタンプの情報のみを根拠に判断する、ローコンテクスト的なコミュニケ-ション・スタイルに慣れつつあると思います。

SMSは日本語だと70文字単位の文字情報で情報を伝える、メッセージング様式です。

デジタル庁の掲げる「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を。」の実現には、日本人のハイコンテクスト的な特性上、情報が足りないと思われ、そこを+メッセージのようなリッチコンテンツのデジタル技術で補うというのも使い方としてはあると思います。判断をしてもらうための根拠となる情報をなるべく多く渡すということが大事かなと思います。それを携帯電話番号だけで実現できればより利便性が高まるのではないでしょうか。

 

 

情報の送信者と受信者の間の信頼性をデジタル技術で担保し、受け手ファーストで、シンプルで使いやすいサービスを提供していくことが使命

 

国ごとに情報伝達手段は流行り廃りがあり変わっていくのですが、携帯電話番号ベースのサービスは存在しつづけると思います。

携帯電話番号はデジタル・アイデンティティーになりうると前述した通り、携帯電話番号の裏側には、いろんなものが根拠として張り付いています。法律に基づくものかもしれないし、本人確認の情報もそうです。さらにそれを補完するものとして改竄されていない証明にブロックチェーンが使用される流れがくるでしょう。そういったものがトータルにデジタルIDという形で管理されていくと、信頼できる相手と信頼できる情報を信頼できる形でやりとりできる社会が形成されるのではないでしょうか。

私は基本的に面倒くさがりで、情報ツールもシンプルこそベストだと思う人間です。どうすればもっとシンプルにできるのか、というのが私の発想の源泉です。

社内を見てみると、いろんなコミュニケーションアプリを使っていて、20代の社員は上手に使い分けているように見えます。しかし、よく考えると、自分の時間は限られていますから、本来使いたいことに自分の時間を割きたいという思いは誰しもあるわけです。つまり無駄なコミュニケーションコストをかけたくない、かつコミュニケーションにかかわるストレスをお互いに与え合いたくない。そこをデジタルで補完する際には、目的に合わせて、受け手ファーストで、シンプルであることが非常に重要な要素になると考えています。

また、どの世代でも同じようにサービスが使えるということも重要です。技術が世代間の情報格差を生じさせてはいけないと強く思っています。高齢者であるとか子供であるとか、災害の際にはいち早く情報を届けなければならない人ほど情報リテラシーが低いのが実状です。そこは本当にシンプルで使いやすいサービスを提供していくことが使命だと思っています。

 

 

日本を飛び出し、「アジアのアクリート」として、デジタルとリアルの間(あいだ)に寄り添い「セキュリティ」と「コミュニケーション」を提供しつづける100年企業を目指す

 

私たちは100年企業を目指しています。

100年経って社名は変わっているかもしれませんが、アクリートは、ビジョンである「デジタル社会にリアルな絆を。」のもと、「デジタルとリアルの間(あいだ)」に寄り添いながらより良い「セキュリティ」と「コミュニケーション」を提供する会社でありたいと願います。

今から100年前と言えば1911年で、中国で辛亥革命が起き、この革命により300年ほど続いた清朝が滅び、2000年来の専制政治が終わりを告げました。テレビ電話なんて想像できなかったし、写真がようやく出てきた頃ですね。100年あればいろんなことがガラリと変わります。最近ではFacebookが社名をメタ(Meta)に変えるなど、メタバースという言葉が注目を浴びていますが、内閣府がムーンショット計画で2050年までに人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現すると謳っていますが、意外と実現するかもしれません。そのなかでアクリートがどういう形でセキュリティとコミュニケーションの分野で貢献できることがあるのかということを考えています。(了)

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