配達に関する自動運転ロボットの実用化とその未来
第2回 持続可能な物流と地域生活の質の向上を目指す

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著者 吉田メグミ
フリーライター。パソコン誌などの紙媒体、企業オウンドメディアや WEB マガジンなどの WEB 媒体での記事作成を広く手がける。Autodesk Design&Make編集・執筆・海外記事のローカライズ担当。ココカラ編集室代表。

第2回では、日本における物流企業をはじめとした取り組みと国が考える物流の日本の未来の姿について概観する。物流の自動化は、高齢化、人手不足、地域交通の空洞化という課題を抱える日本にとって、一刻も早くブレークスルーが待たれる分野だ。

目次

日本でのデリバリーロボット実用化に向けた実証実験

ヤマト運輸株式会社と京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)は、EC市場の拡大や宅配需要の増加に伴う労働力不足の課題解決を目的とし、ラストワンマイル配送における効率化と、非対面・非接触での荷物受け取りニーズに対応する技術として、無人自動配送ロボットを活用した個人向け配送サービスの実証実験を実施している。

2022年11月、2024年9月11日から10月下旬にかけて、北海道石狩市緑苑台東地区の一部エリアにおいて行われた実証実験では、同地区に居住するヤマト運輸の個人向け会員サービス「クロネコメンバーズ」登録者で、無人自動配送ロボットにオープン型宅配便ロッカー「PUDOステーション」を搭載し、ロボットは自宅から徒歩1分圏内の宅配ポイントに停車し、荷物を届ける仕組みだ。ヤマト運輸のスタッフが無人自動配送ロボットのロッカーに宅急便を格納し、受取人にLINEでお届け予定を通知。​ロボットは受取人が事前に指定した受け渡し場所に移動し、受取人はロボットのタッチパネルを操作して荷物を受け取る。この実験は郊外で行われているが、このロボットなら近隣に配達する複数の荷物を同時に配送できるため、人口密集地ではより効率的だ。

海外で実用化されているような、1軒ごとのデリバリーをする宅配ロボットとしては、株式会社ZMPが開発した「DeliRo(デリロ)」がある。2020年8月、高輪ゲートウェイ駅において、蕎麦のデリバリーサービスの実証実験が実施された。​この取り組みでは、注文から決済、配達までを非対面かつキャッシュレスで行う無人デリバリーサービスが提供された。 ​

同年10月には、日本郵便株式会社と協業し、東京逓信病院と麹町郵便局間の約700メートルの公道で、DeliRoを用いた配送の実証実験が行われた。​この試みは、日本初の公道走行による自動配送ロボットの実証実験として注目された。 ​

2021年2月には、ENEOS株式会社および株式会社エニキャリと共同で、東京都中央区の佃・月島・勝どきエリアにおいて、飲食店やコンビニエンスストアの商品をDeliRoで住民に届ける実証実験が行われた。​この取り組みでは、複数の店舗からの注文を受け付け、ロボットによる配送を実施することで、サービスの有用性が検証された。 ​

さらに、2024年12月には、愛知県名古屋市中区栄地区で、DeliRoを活用したラストワンマイル配送の実証実験が実施された。​この実験では、岐阜県可児市で生産されたイチゴを高速路線バスで栄地区まで輸送し、バス停から最終配送先までの区間をDeliRoが担った。 ​DeliRoは都市部や住宅街における自動配送の可能性を示し、物流の効率化や新たなサービスモデルの構築に向けた貴重な知見を提供している。

他にも、LOMBY株式会社がスズキ株式会社と共同開発した配送ロボットの「LOMBY」、駆動部分に自動運転システムを搭載し、貨物ユニット部分はカスタマイズができるセパレート設計が特徴の株式会社Hakobotの「Hakobase」など、国産の配送ロボットも機を待つ状況となっている。

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