配達に関する自動運転ロボットの実用化とその未来
第1回 世界各地で実現し始めたロボット配送

ラストワンマイル輸送が抱えている問題は、ヒトの移動だけにとどまらない。いや、むしろ現在より深刻な状況を迎えているのが、ラストワンマイルの配送・配達における人材不足だ。第1回では、海外における配送ロボットの実装事例を見ていこう。
吉田メグミ
フリーライター。パソコン誌などの紙媒体、企業オウンドメディアや WEB マガジンなどの WEB 媒体での記事作成を広く手がける。Autodesk Design&Make編集・執筆・海外記事のローカライズ担当。ココカラ編集室代表。
目次
ラストワンマイル配送のカギも「自動運転」
ECの発達とともに発展してきた通信販売は、コロナ禍をきっかけに更に利用が増加した。都市部では慌ただしい毎日を送る勤労世代や子育て世代が時短のために、高齢者世代は買い物の負担や感染の危険を軽減するために利用するし、過疎地であれば品揃えの少ない地元では補えないものを取り寄せる。ECサイトはある程度まとめて購入することで送料が無料になるため、高い交通費を出してわざわざ買いに行く必要はないし、衣類や靴などを試着・試履して返品交換するための手順もさほど面倒ではなくなった。さらに、買い物をしてポイントを貯める“ポイ活”も捗る。利用者としては利用しない理由はないのだ。
しかし当然、そこには常に「配達」が必要になる。路上駐車禁止の地域が多い都市部では、配達員がひとりで自動車で配送するのが難しい場合も多い。ふたり組であれば、人員は倍必要になる。労働人口が減少していく中、膨れ上がる配送品をどうやって捌くのか。
シリーズ第2回の「自動運転は社会をどのように変えるのか」では、完全自動運転が実現することで、長距離トラックのような労働者に高い負荷のかかる仕事の負担軽減が見込める未来を見た。では、ラストワンマイル配送ではどうだろう。
ここでもカギになるのは、完全自動運転の実現だ。完全自動運転が可能になれば、無人の宅配車や宅配ロボットがラストワンマイルを自動運行することができる。利用者は玄関のドアを開けて、あるいは建物の外まで出て、品物を受け取る必要はあるものの、大幅な省人化を見込むことができる。