自動運転は社会をどのように変えるのか?
第2回 「人が運転しない社会」への道:労働力不足と高齢化が後押しする技術革新

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寄稿者 吉田メグミ
フリーライター。パソコン誌などの紙媒体、企業オウンドメディアや WEB マガジンなどの WEB 媒体での記事作成を広く手がける。Autodesk Design&Make編集・執筆・海外記事のローカライズ担当。ココカラ編集室代表。

自動運転技術の進化は、交通事故の削減や高齢者の移動支援、物流や公共交通における人手不足の解消など、現代社会が抱えるさまざまな課題を解決する可能性を秘めている。私たちの移動のあり方は、今まさに大きく変わろうとしている。

目次

自動運転は車社会をどう変えるのか

AIやセンサーの技術が発達したことで、自動車をホンモノの“自動”車にしたい、という野望を抱くのは、新しい技術を追求したい人類の常だ。1995年に日本初の無人運転(GoA 3: 監視なしの自動運転)を実現した鉄道路線である新交通システムゆりかもめは、鉄道を利用する人々を驚かせ、安全性に対する不安の声も出たものの、これまでに大きな人身事故は1度しか起こしていない。また、2008年に開通した無人運転鉄道の舎人ライナーは、地震による脱線事故の際に乗客に怪我人を出したが、通常の運行時の事故は起こしていない。限られた路線での運行ではあるものの、いまや無人運転鉄道に対して危険性や不安感を感じる乗客はほとんどいないと言って良いだろう。

では、自動車ではどうだろう。自動運転車が主流になると、自動車交通はどのように変化するのだろうか。前出したように、アメリカではテスラの事故を受け、自動運転車に対する安全性が疑問視された経緯は確かにある。だが、現在発生している交通事故の多くは、ドライバーの不注意や判断ミスによるものだ。自動運転車は、交通ルールを厳格に遵守し、AIやセンサーを活用することで危険を事前に察知し回避できるため、事故のリスクを大幅に減らすことが期待されている。近年問題視されている、高齢者の運転ミスによる重大事故も防ぐことができるし、渋滞の解消と交通の効率化も図れる。もしも完全自動運転車が主流になれば、自動運転車は最適なルートを選択し、無駄な加減速を抑えることでスムーズな交通の流れを実現する。さらに、車両同士やインフラと連携するV2X技術を活用することで、信号待ち時間の短縮や交通量の最適化が可能となり、都市部の渋滞緩和にもつながるはずだ。

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