ロボティクスが支える肉体労働の未来
第2回 ロボットの進化がもたらした変革

1950年代の製鉄・自動車産業に始まるファクトリーオートメーションは、IC技術の進化とともに産業ロボットへと発展し、生産性向上と作業の安全性向上に貢献してきた。近年では、建設業にもロボットが導入され、高所作業や危険な作業を担い、遠隔操作やデジタル管理の精度を高めている。今後、小型・低コスト化が進めば、建設現場の効率化と安全性向上がさらに加速するだろう。
目次
ファクトリーオートメーションから産業ロボットへ
ロボティクスが肉体労働の現場に応用されたのは、第二次産業革命と言われた1950年代の製鉄産業からだった。戦中の軍事需要もあり、早急な近代化が求められた製鉄関連企業では50年代中盤より自動制御の機械によるファクトリーオートメーションを実現。また、自動車産業でも同時期に溶接や塗装、組み立てなど、多くの労働者がひたすら繰り返していた単純作業が機械化され、工場の生産性は飛躍的に向上した。日本ではトヨタ自動車がいち早くオートメーションシステムや自動化を実現し、現在も貫いている「トヨタ生産方式」を確立したことは、多くの人の知るところだろう。
1960年代になると、工場機器にICが搭載されるようになり、機械化の幅が大幅に拡張され、さまざまな産業用ロボットが開発されるようになる。1961年に初めて作られた溶接ロボットのUNIMATEはアメリカのゼネラル・モーターズに導入され、のちに川崎重工が日本に輸入、国産化することで、日本でも産業用ロボットが使われるようになった。初期の産業用ロボットは単純な動きしかできなかったが、プログラム制御が可能になるとともに応用範囲が増え、主に製造の分野で労働集約的で危険を伴う作業を効率化し、作業者の安全を向上させるとともに、産業の生産性を大幅に高める役割を果たすようになった。
1960年代のロボット技術は、後のAIやセンサー技術、協働ロボットへの進化の基盤を作り、1970年代以降は産業ロボットの利用が加速する。単純作業や肉体労働を担う労働者の数は減り、労働者は単純作業から、より高度なスキルが求められる職種へと転換する必要が生じた。労働者はロボットを操作・管理するためのスキルアップ、ロボットのメンテナンス、プログラミング、修理を行う技術の獲得が必要となったが、過酷な肉体労働から解放され、作業の効率化や生産性の向上により利益が上がり、結果的に労働者の付加価値は高まることとなった。