mixiからはじまったSNSはどのような変遷を経てmixi2に至ったか
第3回 縦型動画へ発信されるコンテンツの進化

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寄稿者 荻窪 圭
フリーライター。東京農工大学工学部数理情報工学科卒。学生時代にパソコン誌のライターとしてデビューして約40年。現在はIT系の他、デジタルカメラの記事も手がけつつ、趣味が嵩じて街歩きのガイドも行う。近著に『古地図で訪ねるあの頃の東京』(実業之日本社)等。

テキスト中心だったSNSはスマートフォン時代の到来で大きく変化し、Instagramの登場により写真が主役に。共有から自己表現の場へと進化し、「インスタ映え」で一世を風靡した。さらに、消える投稿「ストーリーズ」が人気を博し、SNSはリアルタイム性と刹那性を追求する時代へと変化していく。

目次

テキストから写真へ Instagramの登場

登場当初のSNSは、モバイル端末のカメラ性能やモバイル回線の速度の制限、なによりも従量課金制だったこともあり、テキストのやりとりが中心であったが、4G回線がポピュラーになり、スマートフォンからの画像投稿が格段に増えた。

たとえば、Flickrというワールドワイドな写真共有サービスがあり、おもにデジタル一眼レフユーザーが作品をシェアしていたのだが、2010年の段階でもっとも投稿に使われたカメラの座はiPhoneが奪っていたのだ。

Twitterは当初画像投稿に未対応だったため、TwitpicをはじめとしてTwitterへ画像を投稿するための写真共有サービスが出現。前述のFlickr!もTwitterへの写真投稿用によく使われていた。

Twitterが画像投稿に対応したのは2011年8月のこと。以降、Twitter専用的位置づけで成り立っていた各種写真共有サービスは徐々にユーザーを減らしていき、それらのサイトは閉じていくことになる。

仕方がないのであるが、当時のツイートは残っていてもそこに表示されていた写真は失われているのは残念ではある。

テキストから写真へ、という流れで重要なのがInstagramの登場だ。

Instagramの誕生は2010年。当初はレトロなインスタントカメラのアイコンで、特徴だったフィルター機能もレトロなものが中心で、投稿できる写真も正方形のみ。しかもiPhone専用だったが、InstagramをFacebookが買収し、Android版が登場した2012年から写真をベースにしたSNSとしてポピュラーになっていき、コメントを付け合ったりハッシュタグの活用でInstagram内でSNSとして完結するようになった。

初期のInstagram。非常にシンプルで写真を正方形にクロップしてエフェクトをつけて投稿。当時は1投稿につき1枚だけあった。

共有してつながる場所から自らをアピールする場所へ

その後、Instagramにアップロードした写真をきっかけに写真家としてデビューする人も現れて注目され、キラキラした生活をきらびやかな写真でアピールする人々が目立ちはじめ、Instagramをホームページ代わりにする飲食店も現れ、「インスタ映え」なる言葉が誕生した。それがだいたい2012〜3年頃で、2017年には流行語大賞にも選ばれる。

写真を共有してつながる場所から、写真を使って自らをアピールする場所へシフトすることでそれまでのSNSとは異なった人気を博することとなったわけである。これはInstagramを使ったPRや集客にも結びつき、「写真を通してつながる」というSNS的な利用とはまた別の「カジュアルなメディア」的な方向で普及した感じだ。

その後、動画配信のTikTokが誕生(TikTokとしてのサービス開始は2017年)して、若年層を中心に人気を博することとなる。

TikTokがユニークなのは縦型ショート動画に特化したこと。そして豊富なBGMや動画編集機能、エフェクト機能を持たせたこと。スマートフォン時代の写真や動画の使われ方にいち早く反応したのだ。

もちろん、TwitterもFacebookもInstagramも動画の投稿が可能だし、動画というと老舗のYouTubeもあるわけだが、BGMをつけた瞬間芸的なショート動画を披露して楽しむ場所としてより若い世代をひきつけたわけで、こちらはSNSというよりは「個人の遊び場だ」だ。

テキストから写真、写真から動画へと主に扱うメディアが変遷したのみならず、それぞれが時代に合わせて新しい層を捕まえたことで、定着したことがわかる。

フィードからストーリーズへ

もうひとつ面白いファクターがある。

Twitterにしろ、mixiにしろFacebookにしろ、今まで投稿したものはすべてストックされ、後から呼び出すことが可能だった。

mixiは(ブラウザで見た場合)カレンダーから容易に過去の日記を選択できる。

Facebookもフィルター機能を使えば日時から古い投稿を絞り込むことができる。

Twitterも検索条件を指定することで複雑な絞り込みが可能だ。

たとえば、2011年3月11日に自分が何をしていたのか、Twitterから検索すればすぐ……検索条件を入れる必要があるので、すぐというわけではないが、その気になればすぐ引っ張り出せる。

「from:ogikubokei ultil:2011-03-12」で検索。ogikubokeiが2011年3月12日以前に投稿したものだ。世田谷区役所にいたこと、帰宅するとエレベーターが止まっていたことがわかる。

これがInstagramやTikTokになると過去の投稿を検索する機能、日時で探す機能がない。

その瞬間を楽しむ、という傾向が強くなるのだ。

そして極めつけが2016年にInstagramが導入したストーリーズである。これは24時間で消えてしまう動画や写真の投稿機能。正確にいえば、消えてしまうのではなく、アーカイブされて自分以外からは見ることができなくなるのだ。

24時間で見られなくなるので気軽に投稿できる上に、ストーリーズは画面の一番上に表示されて目立つので、仲間内に見てもらいやすい。

SNSの動向に詳しい人に聞くと、今の若い人にとってInstagramはストーリーズがメインだという。時代への対応の早さは老舗SNSにとって重要だ。

残す投稿から残さない投稿へ、である。

若い世代の方になるとSNSの使い方がよりリアルタイム性が高く刹那的になってきていると感じる。情報は10年20年たつと別の価値を生むだけに残念な面もあるが、今を楽しむと同時に将来のリスク(黒歴史を残さない)を軽減するというSNS世代ならではの感覚としてはわかる。