〈生成AI時代〉人とAIが共創する新しい働き方
IT批評主催オンラインセミナー ディスカッションレポート(1)
議論の多様性を担保するためにAIを活用する
桐原 馬場先生がやられている(イルミディア)1の反響はいかがですか。
馬場 まだ招待制ということもあって、それほど大きな反響はないです。使ってはみたけれども、組織のなかにどう取り入れていったらいいのか掴めないという方もいらっしゃったりします。
桐原 どのあたりの方の関心が高いのでしょうか。
馬場 ユーザー登録している方を拝見しますと、研究職が多いのですが、他の業界ですと、公務員の方が多いですね。市民の声をきちんと集めたいという動機もありますし、公務員組織のなかでの改革意見を集約したいということだと思います。民間企業では、アイデア出しやブレストミーティングの整理に使われる方が多いようです。
桐原 なるほど。市民の声を集約するという点では効果的に使えそうですね。住民の意見を上手に取り入れて合意形成できるのであれば、それは幸せなことですよね。
馬場 合意形成を図るとひと言で言っても、多様性ゆえの難しさがそこにはありまして、今は多様性が広がりすぎていて、いろんな人の声を取り入れることも、あるいは整理することも、もはや人間だけでは難しいのではないかと思います。

桐原 多様性を担保するためにAIを活用するということですね。
田村 この仕組みが、組織改革にどうつながるのか興味があるのですが。
馬場 イルミディアは基本的に匿名で意見をあげることができます。意見が取り上げられるかどうかわからない組織では、そもそも人は意見を出そうという気にならないですよね。それがAIの力で上に届くんだということが理解できるようになると、意見を出すインセンティブになります。こうした正のループを回すことで、組織改革に自分の意見が反映されるから、もっと意見を出そうというマインドに変わっていくといいなと思っています。
田村 その場合に、上に意見を届けるのは人間の役目ですよね。
馬場 人間の役目なんですけど、たとえば1000個の意見をランダムにずらっと並べられたら読むほうが大変で、届くものも届かなくなります。それをAIによって整理されることで、届きやすくなるということです。
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