ロボティクスが支える肉体労働の未来
第3回 製造業におけるロボティクスの応用

協働ロボット(コボット)は、人とロボットが同じ空間で安全に作業できる新たな技術として、製造業で急速に導入が進んでいる。従来の産業用ロボットとは異なり、コボットは軽量・小型で柔軟な動作が可能なため、細かい作業や繊細な組み立てにも対応できる。さらに、簡単なプログラミングで操作でき、中小企業でも導入しやすいのが特徴だ。今後、コボットは作業者のパートナーとして生産性を向上させ、製造業の新たなスタンダードとなるだろう。
吉田メグミ
フリーライター。パソコン誌などの紙媒体、企業オウンドメディアや WEB マガジンなどの WEB 媒体での記事作成を広く手がける。Autodesk Design&Make編集・執筆・海外記事のローカライズ担当。ココカラ編集室代表。
目次
協働ロボット(コボット)の導入
前述したように、製造業における産業用ロボットの導入は早期から進んでおり、特に高度な技術を駆使したロボットが大規模な工場や生産ラインで活躍してきた。産業用ロボットは、高速で強力な動作が求められる場面で非常に効果的だったが、近年では、センサー技術やカメラ、人工知能(AI)、機械学習などを応用した新しいタイプのロボット、いわゆる協働ロボット(コボット)の導入が急速に進んでいる。これらの技術の進展により、コボットは従来の産業用ロボットが得意とする大規模な作業だけでなく、繊細で柔軟性が求められる作業においてもその真価を発揮している。
従来の産業用ロボットは、高速で大きな力を扱うことができる反面、動作範囲が広いため、作業者が機械に近づくことができず、安全確保のために隔壁やガードが設けられていた。そのため、作業者は機械の動作を遠隔で操作することが一般的で、機械と作業者が協力して作業を行うというシナリオはほとんど存在しなかった。一方、コボットは、産業用ロボットにはできなかったような、細かく精緻で柔軟性のある作業を受け持つことができるため、人間作業者と直接的に協力して作業を行う。これにより、コボットは作業の精度や効率を大きく向上させることができ、さらに安全性の面でも大きな進展が見られる。
コボットは、軽量で小型であることが特徴であり、狭いスペースでも作業を行いやすく、ヒトとの近接作業が可能である。特に、従来の産業用ロボットが作業者から十分な距離を取らなければならなかったのに対し、コボットは安全センサーや柔らかい素材の躯体を装備しており、万が一作業者と接触しても事故を引き起こすリスクが低く、柔軟に作業環境に適応できる。これにより、人とロボットが同じ空間で安全に作業を共にすることが可能となり、作業効率が飛躍的に向上する。