「素直になれなくて」は本当にTwitterドラマなのか?
T w i t t e r ドラマなのにT w i t t e r 成分少なめ
と、ここまで書いてきて、この原稿のテーマを振り返ると、「Twitter ドラマ」であることを思い出した。だが、この「素直になれなくて」は、Twitter ドラマと呼ぶにはあまりにもTwitter が使われる場面が少ない。
筆者などは、仕事をしながらどうでもいいことをつぶやいたり、タイムラインに流れてくるつぶやきに突っ込んだりしているのだが、ドラマのなかの彼・彼女らは、それほど頻繁にTwitter を使っているわけではなさそう。おそらく、フォローしている人の数も100人よりは下。もしかしたら、10〜20人程度といった感じだ。
使っているシーンも、筆者が覚えている限りでは、一人でいつものお店に
来て「誰か暇な人いる?」とつぶやいたり、非常事態に助けを求める際に使
ったり。もう、仲間内の連絡手段としてしかTwitter を使っていないようだ。
おそらく、Twitter ユーザーのなかでも比較的年齢が若い層は、このような使い方をしているのではないかと思われる。というのは、Twitter を一生懸命やっているのは、ほとんどがアラフォー男子だったりするからだ(筆者も含め)。
つまり、「素直になれなくて」はもはやTwitter ドラマではなく、普通のトレンディドラマなのだ。ちょっと系統は違うものの、昔のテレビドラマ「ポケベルが鳴らなくて」のポケベルが、Twitter に変わっただけといってもよい。
しかし、テレビドラマというのはみんな好きなようで、毎週木曜日の夜10時になると、Twitter のタイムライン上がスナナレの話題で賑わう。もはやTwitter が出てくるとか出てこないとか関係なく「ナカジいい人すぎ」「ドクターよくやった」「熟年とキスなう」などといった、純粋にドラマを楽しんでいるようなつぶやきが多くなっている。
たしかに、ちょっと目を離すと話がかなり展開してしまうため、しっかり見ないとわからなくなるという側面もあるが……。
T w i t t e r は出会い系? 妻のアカウントを夫が凍結
実は、最近Twitter 上でおもしろい事件が起こった。
Twitter を出会い系のツールと勘違いした夫が、妻のパソコンを取り上げ、アカウントを凍結してしまったのだ。アカウントを凍結させられた女性は、フォロー数、フォロワー数とも1000人を超える有名人ということもあり、彼女の身を心配する人も続出。アカウント自体はまだあるものの、つぶやきは5月13日以降まったくない状態である。ちなみにその女性(びちょんさん)のTwitter ページは「http://twitter.com/Bitchopin」。ここで彼女のつぶやきを見ることができるが、浮気や出会い系とは程遠い内容だ。
この一件が「素直になれなくて」と関係があるのかはわからない。しかし、少なくとも世の中には「Twitter は出会い系ツール」と思っている人がいるということはわかるだろう。
「電車男」のようなリアル感が感じられない
何話か続けて「素直になれなくて」を見たのだが、途中でどうにも耐えられなくなってきた。もともとドラマ耐性が低いというのもあるのだろうが、なんとなく居心地の悪さみたいなものが感じられるのだ。
たとえば、2ちゃんねるを舞台にした純愛ストーリー「電車男」などは、割と楽しく見ることができた。おそらく電車男は、実際に2ちゃんねる上に書き込まれた内容をもとに作られたノンフィクション(?)だからだろう。
実際の書き込みが原作だから、「電車男」自体は脚色こそあれ、リアルなドラマだ。主人公が何か書き込むたびに、いろいろな2ちゃんねらーがはげましたりアドバイスしたりといったことは、2ちゃんねるでは極稀ながらも起きることがあるので、見ているこちらも「おお、そうそう」と共感できた。
しかし「素直になれなくて」は、共感できないのだ。まさか、覚せい剤の売人たちに囲まれて襲われそうになったときに、助けを呼ぶためにTwitterを使おうとは思わないだろう。
「素直になれなくて」は、とにかく現代の生活にある刺激的なキーワードをどんどん出していくことで、事件がつながっていくストーリー。ある意味「そんなにいろいろなこと同時に起きないだろ」という、ドラマならではの非現実感がある。そこにTwitter という身近で現実感のあるツールが使われていることが違和感の原因なのではないだろうか。
筆者が知る限りは、電車男のようにTwitter 上で何かドラマチックな事件があったという記憶がない。昨年11月、横浜で起きた立てこもり事件を実況中継した話や、今年、原宿がデマで大パニックになった際の実況中継などしか思い出せない。こんな話は、ドラマにならないだろう。
T w i t t e r の皮を被った普通のトレンディドラマ
もし自分がTwitter ドラマを書くとしたら、Twitter で知り合ったまったく見知らぬ二人が、Twitter のリプレイやダイレクトメッセージを使いながらコミュニケーションを取り合い、最終的には立派な漫才師になる(笑)といった、Twitter をとことん使ったドラマにすることだろう。いっそのこと、Twitter 上で先の展開を募集して、その後のストーリーに反映させるといったやり方もありだ。そこまでやれば、堂々と「Twitter ドラマ」と言い切っても、誰も文句は言うまい。
初のTwitter ドラマということで注目を集めた「素直になれなくて」は、実は単なるトレンディドラマだったという残念感はぬぐいきれない。
しかし、あまりTwitter を知らない一般層から見れば、普通のトレンディドラマとして成立しているのだろう。これからは普通のドラマとして見ていくことにしよう。
ちなみに、「素直になれなくて」で一番印象に残っているのは、吉川晃司が瑛太のお父さん役ということだ。時代は流れていると実感した次第だ。