ウェブは“空間”を資源化する〜ソーシャル時代の情報空間論 第3回

Pocket
LINEで送る

コミュニケーションが作る意味の空間

だが、こうしたものよりも私が重要だと考えるのは、「他者との電子的コミュニケーション(CMC= ComputerMediated Communication)」によって意味が生み出されるような情報空間だ。

先ほど挙げた「ルイーダの酒場」のひとつで、全国でもっとも有名なもののひとつ、秋葉原の「ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba」前の例で考えてみよう。秋葉原という街の特性を考えれば、そこが『ドラクエⅨ』のプレイヤーが集まりやすい場所であることは容易に想像がつく。しかし『ドラクエⅨ』の発売が夏だったこともあって、彼らははじめ、店内のゲーム売り場に設けられた「すれちがい通信スポット」に集まっていたのだった。ところが、あまりにもプレイヤーが集まりすぎたため、店の前のベンチ周辺を「ルイーダの酒場」として解放することにしたのである 。

この事例からは、コミュニケーションが生み出す情報空間の様々な特徴が見て取れる。まず、情報空間の意味を生み出すコミュニケーションが、現実空間での会話に限定されないこと。これは、情報通信技術がなければ生じなかったことであり、これまでに存在していた意味的な空間とは質的に異なるものだと言える。しかも現実空間での会話を伴わないということは、その空間の意味を共有できる人が、コミュニケーションに参加している人に限られるということでもある。ヨドバシカメラが設置した「ルイーダの酒場」という看板がなければ、『ドラクエⅨ』をプレイしていない人や、そこですれちがい通信が行われているという情報を知らない人にとっては、そこは何の変哲もない店の軒先にしか見えないのである。

よって「コミュニケーションが情報空間を生み出す」というとき、その「コミュニケーション」が何を指しているのかということには注意しなければならない。それは、ルイーダの酒場の例で言えば、ニンテンドーDSのすれちがい通信だけを指すのではなく、そこにルイーダの酒場があるという情報をやりとりすること、具体的にはインターネット上や『ドラクエⅨ』をプレイしている友人とコミュニケーションすることまでを含んでいるのである。

このことから、コミュニケーションが生む情報空間について、さらに二つの特徴を導き出すことができる。ひとつは、その空間とコミュニケーションが独立のものになる場合があるということ。つまり、ルイーダの酒場に関するコミュニケーションは、ルイーダの酒場が存在する空間から離れた場所でも行われるということだ。そしてもうひとつは、情報空間の意味よりも先にコミュニケーションが行われるということ。つまり、ルイーダの酒場があって、それに関するコミュニケーションが生じたのではなく、まずはプレイヤーどうしのコミュニケーションがあって、後からそこが「ルイーダの酒場」という意味的空間になったのである。

より抽象的な言い方をすれば、インターネットなどの電子的なコミュニケーションは、現実の時空間から独立してある空間の意味を生成し、その場所を情報空間にする力を持っているということになる。だからこそ、電子メディアが普及した現代の情報空間は、特にコミュニケーションという視点で考える場合、都市論や建築論のような物理的空間を対象とする学問だけではなく、社会学的な観点からも論じられなければならないのである。

Pocket
LINEで送る