ケータイ産業はプラットフォーマーの 台頭と対峙できるのか

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見てくれは違っても中身は同じなのだとしたら、メーカーとしては当然ながら、多重投資を避けるべく、可能な限りの共通化を進めることになる。従って来春以降は、アンドロイドを搭載しているものの折りたたみのテンキーという伝統的な形態をした端末が、登場するかもしれない。すでにメーカー各社はそうした開発に入っている。

もはやスマートフォンとは一体何ぞや、という話に近づいてくるが、こうなるとタブレット型端末も含め、あらゆるケータイがアンドロイド一色になっていく可能性がある。ならば、前述のスマートフォンの認識ギャップも、「所詮1〜2割どまり」ではなく「まだ1割で本格的な成長はこれから」と評価した方が、どうやら妥当のようだ。

さらにいえば、そちらに傾倒できない限りは、撤退も視野に入れなければならないというほど、端末メーカー各社は追い込まれている。

2008年には三菱電機が撤退し、また2010年5月にはNEC、カシオ、日立の三者がケータイ部門の経営統合を果たしている。こうした背景を勘案すれば、すでに「アンドロイドか、撤退か」というところまで、判断を迫られていると考えるべきなのかもしれない。

分かれる通信事業者の戦略

ユーザーの支持は拡大を続けている。CPやSPはスマートフォンへの移行をすでに始めている。そして端末メーカーは背に腹の状態にある。このように、外濠どころか内濠も埋まりはじめている中、これまでのケータイ産業の中心であった通信事業者には、どのような経営オプションがあるのだろうか。

まずSBMは、アップルの忠実なる代理店として、今後もアップルへの傾倒と依存を強めるより他に手はないだろう。

そうすることでアップルへの忠誠心を示し、アップルとの販売契約交渉を有利に進めなければ、もはや大々的に調達できる端末は残っていないからだ。

実際SBMは、iPhoneによって顕在化した彼らの「通信インフラの質の低さ」をカバーすべく、フェムトセルを使った基地局敷設や公衆無線LANの整備等、カネをかけずになんとか電波の状況を改善する動きに必死だ。ユーザーの不満を少しでも緩和しつつ、アップルの製品投入サイクルに合わせて、ユーザーに買い替えを進めてもらうこと。これが彼らにとっての至上命題であり、これが実現できている限り、たとえばiPad導入時に日本だけSIMロックを施すという「特

例」もアップルに受け入れてもらえることになる。

それ自体は悪い手ではない。アップルの愛好者はある程度の規模で存在しているし、iPhoneユーザーはなおのこと規模が大きいのは、アップル自身のここ2年ほどの売上比率の推移を見ても分かる。それを通信サービスとして囲い込める

のはSBMしか今のところおらず、その地位を維持するための努力は正しいといえば正しい。もちろんそこに依存することで、他の端末を扱いづらくなるとか、経営判断をアップルの顔色をうかがいながら進めなければならなくなる、といった課題はあるが、彼らからすればやむを得ないところだろう。

ただ、NTTドコモやKDDIは、そうも言っていられない。

SBMの場合はそもそもプラットフォーマーとしての機能が弱かっただけに、かえって固執することなくiPhoneとAppStore という「アップル帝国」に飛び込めた。しかしNTTドコモにはiモードエコノミーが、KDDIにはEZwebが存在する。契約数を考えれば、いずれも巨大なマーケットだし、日本国内だけで比較すれば相変わらず1位、2位の規模である。

おそらくこの両者は、スマートフォンと新たなプラットフォーマーの台頭を前に、今後大きく戦略を変えていくだろう。

まだ起きていない事象でもあるので、当然ながら筆者の推測だが、まずNTTドコモは、それでもあえて既存のiモードを中心としたエコシステムをスマートフォン時代にも維持・発展させていくと思われる。

もちろん容易ならざる道ではある。従来は開発過程から実際の稼働時に至るまで、通信事業者たるNTTドコモが端末の状態を完全に把握できていた。しかし自らの手を離れたところで、自社向けのみならず世界市場向けに作られ、かつ接続もケータイ網だけでなく無線LAN等も利用できるスマートフォンは、NTTドコモを「特別な存在」から「単なる通信事業者」に相対化することになる。その状態でiモードを使い続けてもらうには、相当の工夫が必要だ。

その時の鍵となるサービスが、spモードだと筆者は考えている。表向きはスマートフォン向けのインターネット接続機能を提供しているだけのように見える。しかしその設計思想を紐解いていくと、スマートフォンの先に見え隠れする

インフラ多様化やクラウド・コンピューティングの時代において、ユーザーのネットワーク利用状況を把握するための手段として位置づけているように思える。

このspモードとiモードはすでに連携しており、おそらくはここを軸にして、スマートフォン時代のiモード再構築を進めるのだろう。またspモードがNTTドコモのスマートフォン向けサービスの礎として機能するのであれば、あえて端末にSIMロックを施す必要はなくなる。ロックをかけていようといまいと、ユーザーがspモード(とiモード)を使ってくれればそれでよし、ということになるからだ。

一方KDDIは、この10月以降、アンドロイドと心中すると言っても過言ではないくらい、アンドロイドへの傾倒を強めた。よく知られている通り、KDDIはこの通信事業者3社の中で、スマートフォン対応が最も遅れており、また事業全体の成長戦略を描きにくくなっていたことから、ここしばらくは契約数の低迷等、苦汁をなめる日々が続いていた。そこからアンドロイドの全面採用やスカイプとの連携など、ここにきて思い切った脱却を図った。

ただこれは、KDDIが独自にアンドロイド対応を進めていく、という動きではないと筆者は睨んでいる。もちろん端末メーカーに対する積極的な支援や、オペレーターパックと呼ばれるアンドロイドの各通信事業者向けチューニングは念

入りに行うだろう。ただ、端末開発の動向を見る限り、主導権を握っているのはKDDIではなくメーカーのようだ。

おそらく、端末メーカーが開発しやすい事業環境を構築すべく、KDDIはそれを強力に側面支援して、メーカー主導の端末・サービス開発を推進していくことを目論んでいるのだろう。すなわち、NTTドコモがspモードで「論理的に囲い込む」のとは反対に、KDDIはAndroid Market(グーグルが提供するプラットフォーム)への積極参加を含め、外部資源をうまく活用してユーザーからの共感を得るポジショニングを目指すのではないか。実際そうした意気込みは、〝Android au with Google〞という今回のブランディングにも表れているように思える。

競争の勝者と、新たな挑戦者たち

ケータイ産業の再編を巻き込んだ、プラットフォーム競争の勝者は誰か。そしてその時の業界の姿はどのようなものか。

通信事業者や端末メーカーはもちろん、プラットフォーマー選択で生死が分かれかねないCPやSP、あるいは自らもプラットフォーマーとして名乗りを上げようとしているSNS事業者たちにとって、最大の関心事はそこだろう。

まずOSの市場シェアという観点で言えば、天下を取るのはアップルではなくアンドロイドであろう。ただ、両者は現在のWindowsとMacのように、まったくの別物として今後も共存できるはずだ。あとはそこに他のOSベンダーたちがどう絡んでいけるか、といったところだが、このあたりは概ね固まりつつあると考えていい。

一方でプラットフォーム事業としての成功はどこが収めるのか。前述の通り、プラットフォーマーはアップルやグーグルだけではない。ビッグネームでいえばアマゾンだって有力候補であり、むしろあちこちのサービスに「ただ乗り」できる分、粘り強いかもしれない。またモバゲーを運営するディー・エヌ・エー(DeNA)やグリーといったSNS事業者たちも、プラットフォーマーとしての性格を色濃くしている。さらに通信事業者の巻き返しも世界的に進んでおり、

各国の有力通信事業者が徒党を組んだWAC(WholesaleApplications Community)等の試みも進んでいる。端的に言って、百花繚乱である。

それらが最終的にどうなるか。当面は、おそらくそれぞれ居場所を見つけて共存していくことになろう。というのは、ユーザーはもちろん、CPやSPも、必ずしも一つのプラットフォームに縛られる必要はなく、複数のプラットフォーマーやサービスを行き来する自由を、それこそスマートフォンによって得たからだ。実際、アンドロイド端末の中には、Android Marketや、通信事業者が用意するプラットフォーム、そしてその他のサービスや機能が、併存している。

そう、実はこの「自由」というのが、将来を占う最大のキーワードなのだと、筆者は考えている。すなわち、従来は通信事業者や端末メーカーが規定していたケータイ産業の秩序が、スマートフォンによってユーザー自身で自由に決められるようになった。その時、どんなコンテンツをどのように利用するか、という選択の自由が生まれた結果、プラットフォーマーがあちこちに生まれたように思えるのだ。

だとすると、行き過ぎた自由は秩序を失うことから、ユーザーも含めた産業全体にとっての心地よいポイントを改めて探るための「揺り戻し」が、いずれどこかで生じるように思える。そしてプラットフォーマーの競争や、ケータイ産業のプレイヤーの雌雄は

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