インターネットを利用した広告・告知効果の重要性

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ますます必要となってくるクチコミ効果と個人の宣伝活動

杉本古関

企業広告にとって、インターネットの利用が比重を増すなか、個人による告知の重要性も高まっている。数多くの広告ツールが開発されるなか、インターネットは、どのように活用されていくのか、その宣伝パターンをまとめてみた。

インターネットを利用した広告が拡大

すでにニュースで何度も取り上げられているので知っている人も多いと思うが、日本におけるインターネットの広告費は2004年にラジオの広告費を抜き、08年には雑誌の広告費を抜いている。電通総研の試算によると、2011年では06年の2倍超にまで成長するとのこと。とくに、携帯・モバイル向けの成長が著しい伸びを示している。

需要が多いこともあり、インターネットを利用した広告ツールは多様化が進んでいる。バナーや動画、SEOなどは定番中の定番だが、テキスト広告、メルマガやダイレクトメールも健在だ。アフィリエイトを使った成果報酬型やターゲッティングを使用した分析など、そのシステムも着実に進化している。

とくにモバイル広告では、移動先でもアクセスできるとあって、モバイル用Webページに用意した無料や割引チケット、ポイントカードなど、リアル店舗への集客効果につながりやすいサービスの展開も進んでいる。

ユーザーにとっては、パソコンの画面を印刷するよりも、携帯電話に表示すれば使えるとあって、利便性が高い。

マクドナルドの「かざすクーポン」をはじめ、Yahoo!JAPAN(図1)が展開している地域別のクーポン情報の配信も人気だ。

図1: 「Yahoo!JAPANクーポン」をパソコンで表示。携帯電話からアクセスすると、かなり便利だろう。ちなみに、千代田区だけでも354件のクーポンが表示される。

クチコミと個人での告知の重要性

無料が当たり前のインターネットコンテンツでも、さまざまなツールを駆使することで、着実に収益をあげるにはどうすればいいのか。

日米で注目された、クリス・アンダーソンの『FREE(フリー)』ではないが、やはり無料サービスというのは、今後も充実させていかなければならず、ますますモバイルも含めたインターネットの広告は重要になってくるだろう。

そんななか、ここ数年で台頭しているのが「クチコミ」だ。有名なブロガーが商品の善し悪しを書き、自分のブログで紹介し、企業から利益を得る。企業は、クチコミにより商品の売上を伸ばすというもの。

ブログを見たユーザーがTwitter 上でつぶやき、評判を紹介していくことで、読者が情報の発信者に変わる。まさにクチコミによる宣伝が可能となっている。

オンラインショッピングサイトでは、ブログを使った宣伝は必須ともいえるが、今後はリアルショップでもその重要性が増してくるだろう。

個人が情報発信することで、宣伝ではなく正当な評価という印象をアピールできるのが最大のメリットだ。

 

広まるT w i t t e r とU s t r e a m の活用

最近では、Twitter を利用した告知も多く、さらにUstream と連動させてライブ中継する企業も増えてきている。

Twitter は、1回につき140文字に制限されていることから投稿しやすく、読むのも手軽なことから、世界中で人気のサービスとなっている。2006年にスタート(日本では08年にスタート)し、今では全世界で1億人以上が参加。多くの著名人が利用していることもあり、ユーザーが急激に増えている。

ソフトバンクグループの孫正義氏や政治家の鳩山由紀夫氏、勝間和代氏、堀江貴文氏、広瀬香美氏などのほか、新聞や出版社を含めた各企業も利用が進んでいる。

140文字で何をつぶやくのか? パターンを分けるとすると、まずは発売した商品の告知、リアルタイムな呼び込み、そして情報収集・発信を兼ねたコミュニケーションだ。

商品の告知は、もっともわかりやすいだろう。「本日、○○が発売になります!」といったストレートな宣伝だ。

リアルタイムな呼び込みは、Twitter の利用はモバイルが多いという特性を生かした手法だ。「本日午後3時から、無料試食サービスを始めますよ」とか、「本日は、先着100名様にプレゼントを用意しています!」といったタイプ。iPhone や携帯電話で歩きながら見ている人向けといった感じだ。Twitter は、位置情報を使って近くのつぶやきを表示させることもできるアプリもあるため、このような呼び込みタイプも有効といえるだろう。

最後の情報収集・発信を兼ねたコミュニケーションとは、Twitter の大部分になってしまう分類だが、たとえばソフトバンクの孫社長のように、ユーザーの声を聞き、その要望をTwitter 上で解決するといった使い方だ。その対応のあまりの素早さに、ユーザーが驚くほど。イベント参加の申し込みもTwitter から実施するケースも増えている。

メッセージを発信するのは社長ではなく、社員や関係者が情報を発信することでも、ユーザーと親密度が増してくる。ユーザーが企業に直接アピールできるため、情報収集も可能だ。

Twitter は、基本的に文字情報だけの発信。画像や動画との連携は別サービスを併用しなくてはならない。

たとえば、画像も同時に公開したい場合は、「twitpic」を利用しているケースが多い。twitpic は、画像を公開するサービスで、Twitter と手軽に連携が可能。Twitter 上でURLを表示させ、リンク先に写真をアップすることになる。

そして、Twitter と同様に、企業での告知に利用され始めているのがUstream だ。Ustream とは、手軽にライブ中継が可能なシステム。iPhone が1台あれば、その場で動画の

配信が可能と、その手軽さが特徴。

今までは、生放送するとなるとそれなりの設備と金額が必要だったが、パソコンやiPhone があれば無料でできる。もちろん、ストリーミング配信になるため、iPhone で撮影すると画質はそれほどよくないが、企業による新製品の発表会や映画の試写会の模様、イベントなど、さまざまなシーンの生放送が実施されている。2010年5月に実施された事業仕分けも生中継された。

Ustream はTwitter と連動することが可能だ。生放送開始をTwitter で告知したり、配信中にリアルタイムでみんなのコメントを同時に表示したりすることができる。

2010年5月30日からは、このTwitter とUstream を活用するテレビ番組も登場したほど。もちろん、制作発表ではUstream を使って孫社長も挨拶した。

Twitter もUstream も、企業だけでなく、個人での利用も重要だ。たとえば、大きなプロジェクトに参加した関係者のメッセージでも、そのプロジェクトに関心のあるユーザーにとっては興味のある話だろう。

企業にとっては、発表前の製品については機密保持もあるとは思うが、進行中のビジネスの報告的な使い方もユーザーにとってはおもしろい。しかも、責任者やトップがメッセージを配信する必要はなく、それこそ裏方さんや新入社員が配信しても楽しめるのがTwitter だ。

iPhone を使うことで、いつ、どこからでも生中継が可能。しかも無料とくれば、利用しない手はない。

ブログでの告知も大事だが、それ以上にTwitter を使ったメッセージの配信は、今後ますます利用されていくだろう。携帯や自販機などデジタルサイネージでネットワークがもっと身近に

Twitter やUstream など、個人でも利用可能なツールの動きも見逃せないが、ネットワークを利用する広告のひとつとして、デジタルサイネージも紹介しておこう。

デジタルサイネージとは、直訳すると「電子看板」。要するに、ディスプレイを使ってデジタルの看板を表示させるというもの。液晶モニタをお店の外に向けて、企業広告の映像や静止画を表示させていてもデジタルサイネージなのだが、注目したいのは、このデジタルサイネージがネットワーク化する方向で進んでいることだ。

たとえば、ジュースなどの自動販売機にある液晶モニタに企業広告を配信するだけなら今でも実行しているが、これをネットワークに接続することで、任意に配信映像を変更したり、特定の場所限定でストリーミング配信したりすることが可能となる。

今までは不特定多数に向けた配信だったのが、ネットワークに繋がることで時間や場所などを考慮して視聴者を絞ることができるということだ。

現実的に稼動するにはもう少し時間がかかりそうだが、地域の電光掲示板のような利用方法なども検討されている。

Twitter やUstream 同様に、ターゲットを絞った安価な配信が期待できるだろう。