BABYMETALはプロジェクトではない、バンドである!

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小中千昭

日本のアイドルが世界的なアーティストになるというかつてでは考えらないことを実現しようとしているBABYMETAL。ロックファンを巻き込み拡大するグループの魅力を『BABYMETAL試論』(アールズ出版)の著者が探る(第1回)。

 

リアリティに飢えた現代人に、一回性の強い生のライブパフォーマンスで応えるBABYMETAL

 

本稿を読む前に、ご注意いただきたいことがあります。BABYMETALは非常な勢いで変化を続けるバンドです。初見で衝撃を受けてファンになった賛同者、コアなメタル好きをはじめとしたアンチ勢力の、すべてを巻き込んで突き進むダイナミックさを持っています。

ですからこの記事が発表される時点で、さらなる大きな変貌を遂げていたとしても、何ら不思議はありません。もし私の意見を読んで、本当かなと疑問に思ったのであれば、あれからBABYMETALがさらに世界を変えたのだと感じて欲しいと思います。

以上を踏まえたうえで、私は欧米のファンが陥っている誤解について指摘したいと思います。おそらく欧米の方々は、BABYMETALを、日本のレコード会社が作り出したプロジェクトと思っているでしょう。アーティストと呼ばれる人たちによる、自分の内部の音楽的渇望を外に出したタイプのサウンドではなく、頭の切れる大人たちが大衆に受けるべくして作り上げた偶像と考えている人が多いはずです。それでも良いモノは良いと思う人、所詮は嘘っぱちだと思う人がいて、評価が賛否両論に別れている現状があります。

日本のファンはすでに分かっていますが、ところがそれは間違いです。BABYMETALはプロジェクトではなく、バンドであると言っていい。「メタルとは何か」「メタルと呼んでいいのか」という議論は横に置いて、BABYMETALのパフォーマンスには圧倒的な迫真性を持つリアリティがあり、おそらくそれが世界中の人々の心の奥底を奮い立たせているのだと思います。作られたプロジェクトが醸し出す、プラスチック感、物足りなさとは一線を置いているのです。

私たち現代人は、あまりにイミテーションによって出来た作品に囲まれすぎました。日本であれば、ミュージシャンによるテレビや大規模コンサートのパフォーマンスで、歌の録音を流す「口パク」を悪と考えない風潮があります。生歌ではコンディションによって、ライブのできに違いが生じますが、その揺らぎを楽しむよりも、録音による品質担保の安心安全を、パフォーマーと観客の両者が受け入れているようです。

ハリウッド映画もそうです。いつからか映画撮影の現場で、音を同録することがなくなり、すべてをアフレコに頼るようになりました。役者の声はクリアになりましたが、本物の炎天下の息づかいや生活音は消えました。

おそらく私たちは、いい加減その種の虚構に飽きており、腹にドスンとくるリアリティある表現を求めるようになっています。『マッドマックス4』に皆が引き込まれたのは、あり得ないようなアクションを、生身のスタントマンが体を張ってやったから。同様にBABYMETALも、リアルへの欲求に真正面から応えています。

神バンドの高い技術力は、欧米のファンであろうと言わずもがな。かっこいいプロモーションムービーをライブで再現する振り付け。そして生歌にこだわるSU-METALのプロ意識が合わさって、BABYMETALというパワフルで一回性の強いライブが魅力のバンドが出来上がっています。特にSU-METALの強い個性と、どんなライブでも生歌を歌おうとする情熱が、このバンドを引っぱっていると私には思えてなりません。個性が発散するサウンドとエネルギーを増幅する集団を、バンド以外の何と呼べば良いのでしょうか。

ネットの動画をひと目見れば、BABYMETALが単なるプロジェクトの枠を超えたバンドであることがわかるはずです。大人たちが良いものを集めて作った上等品として楽しむよりも、心を開いて、メンバーの爆裂する個性を感じてみてください。

 

Writer:
小中千昭 Chiaki Konaka / 脚本家・作家
映像ディレクターとして活動後、1989年にホラービデオシネマ『邪願霊』に脚本家として関わる。以降数多くのホラー作品を手がけ、90年代から現代に続くジャパニーズホラーの原型を作った。さらにアニメ、映画、テレビドラマへ活躍の場を広げ、「serial experiments lain」「ウルトラマンティガ」などに脚本を提供。近年はBABYMETALに衝撃を受け、WEBサイト『BABYMETAL試論』を開設した。著書に『恐怖の作法 ホラー映画の技術』(河出書房新社)、『BABYMETAL試論』(アールズ出版)などがある。
Photo credit: Mike Babiarz / CC BY
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