ハイブリッド車がヒットした理由

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小野泰治

AIの進化によって様変わりを見せる自動車産業。その変化の最初の兆しは、ハイブリッドカーの登場にあった。日本でなぜハイブリッドカーが生まれたのかを考える。

日本独自の道路環境が生んだハイブリッドの効率性

 

いまや、エコカーの代名詞的存在として広く認められているハイブリッド車。だが、ハイブリッド車であれば即エコかといえば話はそう単純なものでもない。

その基本的な狙いは、ガソリンやディーゼルなどのエンジン(内燃機)で非効率な領域を電気モーターで補いエンジンを小排気量化、あるいは走行中にエンジンが稼働する領域を少なくすることで燃料消費を抑えることだ。

しかし、1台のクルマを動かすのに動力源を2つ搭載することになるだけに構造は普通のエンジン車より複雑になりがち。加えて、電気モーターを動かす電力の供給元として通常より大きなバッテリーの搭載が不可避なので燃料消費のデメリットとなる車重増加が避けられない。

さらにつけ加えるなら、高速で連続走行する環境下ではエンジンを停止させることができなくなるので燃料消費は普通のクルマと大差がなくなる。事実、ハイブリッド車と謳ってはいても、その純粋な経済性は個々のクルマの性能差に左右される部分が大きいというのが実際のところ。

並みのハイブリッド車だと、燃料消費は同クラスのエンジン車に対して2~3割良い程度。使い方にもよるが、価格が高くなることまで考慮すればユーザーが支払うコストはむしろ通常のエンジン車より割高でエコにならない可能性もある。

それだけに、日本やアメリカでハイブリッド車人気に火が付いた当初、特に欧州の自動車メーカーはこのシステムに懐疑的だった。ドイツを筆頭とする欧州では高速で連続走行する機会が多いため、ガソリン車より燃料消費が少ないクリーンディーゼル車の方が二酸化炭素排出量が少ないエコな存在と考えられていたからだ。

では、なぜここまでハイブリッド車が広く認知され結果的に欧州勢も追随せざるを得なくなったのかといえば、ムーブメントの火付け役となったトヨタ・プリウスを筆頭とする日本製ハイブリッド車の完成度が最初から高く、それが市場に強いインパクトを与え得る存在だったからだ。

特に初代プリウスは、来たるべき未来のクルマを連想させるに十分な出来映えだった。現行トヨタ車にも受け継がれているそのシステムは、電気モーターのみで走る領域が広いことが特長のひとつ。停止時はもちろん、20~30㎞/hあたりまでならエンジンが始動することはほとんどなく、クルマは無音で走り出す。現代ではもはや珍しくないが、当時“音がしないクルマ”は文字通り画期的だった。

また、走行時の平均速度が低い日本の交通環境だとエンジンを高い頻度で休止させる点も新鮮だった。下り坂など、負荷が少ない状況では走行中でもエンジンが止まるので燃料消費も少なく、プリウスの経済性は既存のエンジン車を古く見せるに十分な説得力を持っていた。誰もが新鮮と感じるモノを高い完成度で量産したこと……、ハイブリッドがエコカーと認知される上で、初代プリウスが果たした役割は途方もなく大きいのである。

 

 

Writer:
小野泰治 Yasuharu Ono
自動車評論家・ライター。自動車専門誌の副編集長をへて、2010年からフリーランスとして活動。運転が好きでレースの出場経験もある。
Photo credit: halfraln / CC BY
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