軽自動車は日本が誇るべきガラパゴス?

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小野泰治

日本独自で進化を遂げてきた軽自動車。そこにつまったテクノロジーは自動車のこれからの可能性を十分に感じさせてくれるもの。日本の自動車メーカーは軽自動車に何を注ぎ込んだのか?

 

一般小型車に引けを取らない日本の軽自動車

 

自動車関連でジャパン・オリジナルを挙げるとすれば、その筆頭格はなんと言っても軽自動車だ。元々は自動車が高嶺の花だった時代に庶民の足を供給することを目的として生まれたカテゴリーだが、その実用度はもはや普通の小型車と比較しても見劣りしない水準にまで進化。最近になって大幅に負担率が高くなったが、依然普通車に対し税制面で優遇されていることもあって、あえて軽自動車を唯一の「マイカー」に選んでいるユーザーも多い。

その規格を大ざっぱに言えば現在は全長が3.4m以下、全幅は1.48m以下、全高は2m以下で搭載するエンジン排気量は660㏄以下というもの。また乗車定員は4名までで、商用の貨物仕様は積載量が350㎏までに制限されている。乗車定員が5名となる小型乗用車のボディサイズは全長が3m台の後半、全幅は1.6m台が最小レベルであることを考慮すると縦横のボリュームについてはさらにひと回り以上小さいことになるわけだが、現代の軽自動車は大人4名に過不足のない居住空間を確保。1993年にデビューしたスズキ・ワゴンR、2003年登場のダイハツ・タントで主流派であることが決定的になった背の高いモノスペースのモデルともなれば、並みの小型車を寄せ付けない室内空間の広さ、使い勝手が手に入る。

360㏄からスタート、550㏄を経て660㏄となったエンジン排気量は一般的な小型車と比較すれば依然としてミニマム。しかし、街中や平均速度が低い日本の郊外路であればもはや自動車としての動力性能にも不足はなくなった。また1980年代から一般化、現在も各車の上級グレードに設定されることが多いターボ仕様であればスタンダードな小型車より走りは活発なほどで高速走行も苦にしない。そのエンジンの小ささ、あるいはハイブリッド車に代表されるエコカーと比較すればターボ仕様の燃料消費は期待値に届かないのが実際のところだが、自然吸気(NA)と呼ばれる普通のエンジンを搭載する仕様なら小さな見ために違わぬ経済性も期待できる。

さらに付け加えるなら、日本の軽自動車はハイテク度でも小型車と同等のレベルにある。これは同じような社会環境から生まれ、現在も細々と命脈を保つヨーロッパのマイクロカーと比較すると実に対照的な特質でもある。例えば、機構としての採用は欧州車の方が早かったアイドリング・ストップ搭載などは当たり前。最新モデルでは、最小限といえる追加投資(5万円ほど)で衝突事故の回避・被害軽減ブレーキも装備できる。また、本来の主旨からは逸脱しているが望めばホンダS660やダイハツ・コペンに代表される趣味性の高いスポーティなモデルもチョイスできるという具合だ。かつては、アメリカなどから非関税障壁の象徴とも言われた軽自動車。しかし、その実像は海外のメーカーでは決して具現化できない、日本だからこそなし得た技術の集合体なのである。

 

 

Writer:
小野泰治 Yasuharu Ono
自動車評論家・ライター。自動車専門誌の副編集長をへて、2010年からフリーランスとして活動。運転が好きでレースの出場経験もある。
Photo credit: Jason Thien / CC BY
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