日本製自動運転のポテンシャルは? 自動車ジャーナリストに訊く①

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近年、自動車メーカー各社の自動運転技術開発競争が、激化している。日本でもトヨタ、ニッサンなどが、既に公道での試験走行を実施。状況によっては、人間を上回る優れた性能を見せた。実用化にはまだ法整備などの様々な課題があるが、今回は自動運転技術の現状と、運転自体を楽しむこと(=ドライビング・プレジャー)が今後生き残っていくかどうかについて、自動車ジャーナリストの小野泰治氏に話を聞いた。

アクセルワークなど機械操作に関しては既に人間を上回る自動運転技術。今後の課題は判断力

――日本の自動車メーカーの自動運転技術の現状を教えてください。

小野泰治氏(以下、小野氏)

日本のメーカーに関しては、2014年に日産自動車が「LEAF」を使った実証実験を行いました。この実験では、横浜市の日産自動車グローバル本社から横須賀市にある同社追浜工場まで、一般道と高速道路を合わせた約30kmの行程を自動走行しています。

また、2015年にはトヨタ自動車が、自動運転のメディア向け体験会を実施しました。私もこれに参加して、首都高速道路での自動運転走行を体験できました。首都高速道路は、日本の他の高速道路と異なり、インターチェンジやジャンクションで本線から出るときに、左だけでなく右から流出しなければいけない場合があります。体験会のルートでも右へ流出する場面があり、追い越し車線に他の車がいないタイミングを見計らって自動で方向指示器を出し、高速道路を降りています。

 

――人間の運転に比べて、運転の上手さや乗り心地はいかがでしたか?

小野氏:非常に上手でした。運転が下手な人間に比べると、とてもスムーズで乗り心地も良かったですね。

 

――法整備などの面を除いて技術だけに絞って考えた場合、自動運転システムは実用化レベルにあるのでしょうか?

 

小野氏:たしかにアクセルやブレーキ、ハンドルなどの操作に関しては、既に人間を上回っています。しかし、自動車の運転は単なる機械の操作だけではなく、状況に応じた判断も重要です。自動運転システムの開発で最も難しいのが、この判断を機械にさせることです。

例えば、進行方向に急に物体が飛び出してきたとします。それが人間であれば、急ブレーキをかけてでも回避しなければいけません。しかし、それが風に吹かれて飛んできたビニール袋だった場合、急ブレーキをかけて後続車に追突されるリスクを負うよりも、そのまま走り抜けた方が安全です。人間は運転しながらその他にも様々な状況判断を繰り返していますが、現状では機械の状況判断は人間には及びません。

判断を下した後にブレーキをかけるまでの反応速度は、機械の方がはるかに優秀です。ですから、この機械の状況判断力という部分で、各社が実験を積み重ねて懸命に改善を図っていると思います。

 

――日本の自動車メーカーと海外の自動車メーカーでは、開発が進んでいるのはどちらでしょうか?

小野氏:日本と海外の比較ということでいえば、どちらもそれほど大きな差は無く一長一短だと思います。各社のテストの発表や報道などでは、海外メーカーの方が進んでいるようみえるかもしれません。しかし公道上でのテストは国の許可が必要で、テストを実施した国によって許可された内容が違ったりする場合もあります。まったく同じ条件でテストできれば、国内メーカーも海外メーカーと同程度の性能を発揮するはずです。

 

――自動運転車の発売はいつ頃になりそうでしょうか?

小野氏:海外メーカーでは、アウディが2020年までに自動運転車を発売すると名言しています。一方、日本に関しては、先ほどお話した日産自動車の2014年の実証実験時にトランクスペースが自動運転用の装置で一杯になっていました。しかし、同社のカルロス・ゴーン社長は、その自動運転装置のサイズを2020年までにトランクスペースが確保できるくらいに小型化すると語っています。実際に日産自動車が自動運転車をいつ発売するかということは別にして、2020年に発売できるレベルまで開発するという意志がうかがえます。

実際に各社がいつ自動運転車を発売するかということについては、日本メーカーと海外メーカーというよりも、各社の販売台数が大きく関わってくると思っています。販売台数が多いメーカーは、それだけ社会的影響力が大きいので、発売には慎重にならざるをえません。いずれにせよ2020年が、一つの目安になりそうです。それまでは、各メーカーが業界標準を賭けて、熾烈な開発競争を繰り広げることになるでしょう。

 

 

profile: 小野泰治
自動車評論家・ライター。自動車専門誌の副編集長をへて、2010年からフリーランスとして活動。運転が好きでレースの出場経験もある。
Photo credit: Audi USA / CC BY
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