日本の大人がいま読みたいのはファンタジー! WEB投稿型の小説出版サービスから流行を探る 梶本雄介氏インタビュー

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日本では明治の昔から同人活動が盛んで、小説、随筆、紀行、俳句、短歌などあらゆるジャンルの同人誌が、全国各地で作られていた。現在、同人誌はマンガが中心となっているが、文芸が駆逐されたわけではなく、多くの在野の文士たちはネット上の小説投稿サイトに表現の場を求めている。

梶本雄介氏はそんなネット小説に可能性を見出して株式会社アルファポリスを設立、小説のネット投稿、読者による評価システム、人気作品の出版という一連の流れを基軸としたビジネスを展開している。2015年から2016年にかけてアニメ化された小説『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』(発行:アルファポリス)は記憶に新しいところだ。数々のヒット作を世に送り出している梶本さんに、ネット小説界の流行について聞いた。

—投稿されてくる小説の流行のジャンルについて教えてください

梶本雄介氏(以下、梶本)

大きなジャンルとしてはファンタジーが流行っていて、なかでも「異世界もの」「ゲームもの」に人気が集中しています。

「異世界もの」は、主人公がどこだかわからないけれど、『ロード・オブ・ザ・リング』のような中世的な世界に放り込まれる話です。主人公は必ず日本人で、事故にあってトリップしたり、生まれ変わったりして異世界に行き、魔法などの特殊能力を使いながら活躍します。

もう一方の「ゲームもの」は、ゲームの世界観を投影した作品です。『ファイナルファンタジー』『ドラゴンクエスト』それにネットのMMORPGなどが元になっていて、「HP」「ギルド」「クエスト」といったゲームのシステムが強く物語に関係してきます。ゲームの世界に入って出られない主人公などが典型です。

 

—なぜファンタジーが人気になるのだと思われますか?

梶本:私たちの読者のメインターゲットは特に30代の大人です。ファンタジーが好きな大人だって多いはずですが、これまではファンタジーは児童書の守備範囲でした。読めるものといえば『ゲド戦記』『ナルニア国物語』といった大人も読める児童書に限られていたといっていいでしょう。

世に無い物が読みたければ、自分で話を考えるしかありません。そして今はネットがあります。いつの間にかネットを中心に大人が読むに耐えるファンタジーの創作が盛んになっていて、私はそれを書籍化する仕事がしたいと考えたのです。

 

—「異世界もの」「ゲームもの」の人気は凄まじくて、さまざまな作品が生まれているようですね

梶本:「異世界もの」「ゲームもの」は本当に数が多くて、さすがに飽和状態であると思います。とはいえ作家の方たちは、他と違うことをしようと、工夫やアレンジを捻り出してくるので、まだまだおもしろい。最近では「Re:Monster」という作品が売れていて、これはファンタジーではお馴染みの弱いモンスターであるゴブリンに主人公が転生する話です。弱いところから出発して、同族の仲間を鍛えて軍団を作っていくという、ちょっとした歴史成り上がり浪漫の要素を持っています。女性向けの作品では、勇者が魔王を倒した後に、姫ではなくその侍女に求婚するという話があって、これもおもしろいです。

一般にファンタジーでは、敵との戦いが物語の主軸になると思いますが、日本の場合だと、ファンタジーにも日常や生活を持ち込みます。それも特徴のひとつでしょう。あくまで私見になりますが、かつて日本の社会が右肩上がりの成長を続けていた頃は、厳しい競争の物語が読まれ、今の少し力を抜いていこうという世相においては、心躍るよりも、ほのぼの、ゆっくりとした話が好まれるのではないでしょうか。

 

梶本雄介 Yusuke Kajimoto
1993年、東京大学工学部を卒業し博報堂入社。2000年にアルファポリスを設立し社長に就任、現在に至る。ポータルサイト「アルファポリス」は個人が小説や漫画などを投稿でき、閲覧は無料、会員登録したユーザーが作品の評価を行うしくみをとる。編集部はユーザーの評価を鑑みながら作品を書籍化する。投稿コンテンツの累計は16年3月末時点で約3万点。このうち500作品超が上梓された。
Photo credit: jlodder / CC BY
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